閉ざされた過去

フィクション

狙われた命

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白石教授の協力を得て、私たちはブラッククロスの幹部たちの動きを追うことに専念していた。彼らの計画を阻止するためには、まずは彼らの具体的な行動を突き止める必要があった。

「次に狙われるのは、どこだろうか?」慶太が地図を見ながら言った。

「この工場以外にも、彼らの活動拠点は複数あるはず。全てを調べていくしかないわね。」私は地図に印をつけながら答えた。

私たちは次のターゲットとして、郊外にある研究施設を調査することに決めた。その施設は表向きは合法的な研究を行っているが、実際にはブラッククロスの実験が行われている可能性が高かった。

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研究施設に向かう途中、私たちは注意深く周囲を監視していた。ブラッククロスは私たちの存在に気づいているかもしれないからだ。車を駐車場に停め、施設の外観を確認した。

「ここが例の研究施設か。」私は双眼鏡を使って施設の様子を観察した。

「見たところ、セキュリティは厳重そうね。正面から入るのは無理かも。」夏美が言った。

「ならば、裏口を探そう。」私は決意を固め、夏美と共に施設の裏側に回り込んだ。

裏口は鉄製のドアで、鍵がかかっていたが、セキュリティシステムが比較的古いことに気づいた。私はツールを使って鍵を開けることに成功し、慎重に中へと進んだ。

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施設の内部は冷たく、無機質な空間だった。廊下を進むと、監視カメラが設置されているのが見えた。私たちはカメラの視界を避けながら進み、目的の部屋に辿り着いた。

「この部屋の中に重要な資料があるはず。」私は鍵を慎重に開け、中に入った。

部屋の中には大量の書類やパソコンが並んでいた。私は手分けして資料を調べることにした。

「ここに、彼らの最新の実験結果がある。」慶太がファイルを手に取り、私に見せた。

そのファイルには、遺伝子操作による新薬の試験結果と、その被験者の詳細が記されていた。被験者たちは実験の結果、深刻な健康被害を受けていた。

「これを見て。彼らは人々を無理やり実験に参加させている。」私はファイルを読みながら憤りを感じた。

「こんな非道なことを許してはならない。」慶太も怒りを露わにした。

その時、背後から足音が聞こえた。振り返ると、そこには数人のセキュリティガードが立っていた。彼らは銃を構えて、私たちを取り囲んだ。

「ここで何をしている?」一人のガードが鋭い声で問い詰めた。

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私は冷静さを保ちながら答えた。「私たちは真実を知りたいだけだ。この施設で行われている非人道的な実験を暴こうとしている。」

ガードたちは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに銃口を私たちに向け直した。「そんなことは関係ない。ここから出て行け。」

私は夏美に目配せをし、彼女が後ろに下がるのを確認した。私たちは抵抗せずにガードたちに従うふりをして、機をうかがった。

突然、施設の中が警報音で満たされた。ガードたちが一瞬気を取られたその隙に、私は夏美と共に素早く逃げ出した。廊下を駆け抜け、裏口から外へと飛び出した。

「急いで!彼らが追ってくる!」私は叫びながら車に向かった。

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私たちは車に飛び乗り、急発進させて施設から遠ざかった。バックミラーには、ガードたちが追ってくる姿が映っていたが、何とか振り切ることができた。

「危なかった…」私は息を切らしながら言った。

「でも、重要な情報は手に入れた。これで彼らの計画を阻止する手がかりが揃った。」慶太はファイルを握りしめながら答えた。

私たちは白石教授の元に戻り、手に入れた情報を共有した。教授はその情報を解析し、ブラッククロスの次の動きを予測することに集中した。

白石教授視点

「この情報から判断すると、彼らは次に都市部で大規模な実験を行おうとしているようだ。そのためには、大量の被験者が必要になる。」教授は資料を見ながら分析した。

「都市部で実験を行うということは、一般市民が巻き込まれる可能性が高い。私たちはその計画を阻止しなければならない。」慶太が言った。

「まずは、彼らの拠点を突き止め、その計画を未然に防ぐ必要があります。そのためには、内部の協力者を見つけることが鍵です。」教授は真剣な表情で答えた。

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「内部の協力者…誰かが彼らの計画を内部から漏らしてくれることを願うしかないわね。」私は考え込んだ。

「実は、一人心当たりがある。かつてブラッククロスに協力していたが、今は彼らに疑問を抱いている人物がいる。彼の名前は佐藤秀樹だ。」教授は資料を見ながら言った。

「佐藤秀樹…その人物に接触することができれば、計画を阻止するための重要な情報が得られるかもしれない。」慶太が答えた。

私たちは佐藤秀樹という人物に接触するための準備を始めた。彼の居場所を突き止め、次の行動を計画した。

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佐藤秀樹は町の外れにある古いマンションに住んでいた。私たちはそのマンションに向かい、彼に接触する機会を伺った。

「ここに彼が住んでいるはずだ。」私はマンションのドアをノックした。

しばらくして、ドアが開き、中から疲れた表情の中年男性が現れた。「何の用だ?」

「佐藤秀樹さんですか?私たちはあなたに話があるのです。」私は真剣な表情で答えた。

佐藤は一瞬警戒したが、やがて私たちの真剣さを感じ取ったのか、ドアを開けて中に招き入れた。「入れ。」

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部屋に入ると、佐藤は私たちに椅子を勧め、自分も向かいの椅子に腰を下ろした。「さて、何の話だ?」

「私たちはブラッククロスの計画を阻止しようとしています。あなたがかつて彼らに協力していたことを知り、真実を知りたいのです。」私は率直に話した。

佐藤はしばらく黙っていたが、やがて重い口を開いた。「そうか…君たちの父親も同じことをしていたな。彼らもまた、真実を求めていた。」

「私たちの父親を知っていたのですか?」私は驚いて尋ねた。

「知っていたとも。彼らは勇敢だったが、その勇敢さが命を奪った。」佐藤は苦々しい表情で答えた。

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「ブラッククロスは、遺伝子操作によって人類を進化させるという狂った夢を追い求めている。そのために多くの無実の人々が犠牲になっている。私はそのことに耐えられず、組織から手を引いた。」佐藤は深い溜息をつきながら続けた。

「私たちはその計画を阻止するために、あなたの協力が必要です。何か手がかりになる情報はありませんか?」慶太が尋ねた。

「実は、彼らの次のターゲットは…」佐藤が言いかけたその時、突然窓ガラスが割れ、銃声が響いた。佐藤が胸を押さえながら倒れた。

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「佐藤さん!」私は叫びながら彼に駆け寄った。彼の胸から血が流れていた。

「くそっ、狙われたか…」慶太が窓の外を見ながら言った。そこには、黒い服を着た男たちが逃げていく姿があった。

「早く、救急車を呼ばなきゃ!」私は慌てて携帯電話を取り出し、救急車を呼んだ。

佐藤はかすれた声で私たちに言った。「奴らは…次に…都市部の…大規模な…」

彼の声は途切れ、やがて静かに目を閉じた。佐藤の命を奪ったのは、ブラッククロスの手の者たちだった。

「絶対に許さない…」私は涙をこらえながら言った。「私たちは必ず彼らの計画を阻止する。」

「そのためには、次の手を考えなければならない。」慶太が冷静さを保ちながら言った。

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私たちは再び白石教授の元に戻り、佐藤の犠牲を無駄にしないために全力を尽くすことを誓った。教授は佐藤の提供した情報を基に、ブラッククロスの次の動きを予測し、具体的な対策を考えることに集中した。

「都市部での大規模な実験…それを阻止するためには、まず彼らの計画を詳細に把握しなければならない。」教授は真剣な表情で言った。

「私たちは佐藤さんの犠牲を無駄にしないために、全力で動きます。」私は決意を新たにした。

「そうだ。彼の遺志を継ぎ、真実を暴くために。」慶太も力強く答えた。

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