閉ざされた過去

フィクション

深まる謎

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私たちは町に戻り、父たちが残した情報をもとに調査を続けた。ブラッククロスの最終目的を突き止めるため、次の手掛かりを探さなければならなかった。書類には複数の場所と名前が記されていたが、その中でも特に気になる一つの名前があった。

「ここに書かれている‘白石教授’という名前。彼がブラッククロスの計画に深く関わっている可能性が高い。」私は指差しながら慶太に言った。

「確かに。この人物に接触すれば、さらに重要な情報が得られるかもしれない。」慶太は資料を見ながら頷いた。

私たちは白石教授の居場所を調べることにした。彼は現在、大学で遺伝子研究の教授を務めていることがわかった。私たちはその大学に向かい、教授に接触する機会を伺った。

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大学に到着すると、私は夏美と共に白石教授の研究室へ向かった。研究室のドアをノックすると、白髪交じりの壮年の男性が出迎えた。

「何かご用ですか?」教授は穏やかな声で尋ねた。

「白石教授ですか?私たちはあなたにお話があるのです。」私は真剣な表情で答えた。

「どうぞ、中へ。」教授は私たちを研究室に招き入れた。

研究室の中には、多くの資料や実験器具が並んでいた。壁には遺伝子研究に関するポスターが貼られ、机の上には最新の研究論文が山積みになっていた。

「さて、どのようなご用件でしょうか?」教授は興味深そうに私たちを見つめた。

「私たちの父親がブラッククロスという組織に関わっていたのです。その組織が何を企んでいるのかを知りたくて、あなたの名前が資料にあったためお話を伺いたいのです。」私は率直に説明した。

白石教授の顔が一瞬曇ったが、すぐに冷静さを取り戻した。「ブラッククロス…確かに私は彼らのプロジェクトに関わっていました。しかし、そのプロジェクトは非常に危険なものでした。」

「どのようなプロジェクトだったのですか?」夏美が尋ねた。

白石教授視点

「そのプロジェクトは、遺伝子操作を利用した新薬の開発でした。表向きは医療の進展を目的としていましたが、実際には非常に危険な副作用があることが判明しました。私はそのことに気づき、プロジェクトから手を引くことにしたのです。」白石教授は深い溜息をつきながら答えた。

「その危険な新薬とは?」慶太がさらに尋ねた。

「新薬は、人間の遺伝子を操作することで病気を治すことができるというものでした。しかし、実際には遺伝子操作が予期しない副作用を引き起こし、被験者に重大な健康被害をもたらす可能性があったのです。」教授は苦々しい表情で続けた。

「それを知った父たちは、プロジェクトの真実を暴こうとしたのですね。」私は理解した。

「そうです。君たちの父親は、その危険性を世間に知らせるために動いていた。しかし、ブラッククロスの力は強大であり、彼らの命を奪ったのです。」教授は悲しげに語った。

「私たちは父たちの意志を継ぎ、その真実を明らかにしたいのです。教授、協力していただけますか?」私は真剣な眼差しで尋ねた。

「君たちがそこまで決意しているのなら、私も協力しましょう。私が持っている情報を全て提供します。」教授は静かに頷いた。

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白石教授の協力を得て、私たちはさらに多くの情報を手に入れた。教授の資料には、ブラッククロスの幹部たちの名前や活動拠点、そして彼らの最終目的が詳細に記されていた。

「彼らは、新薬の開発を通じて何を目指しているのでしょうか?」私は資料を読みながら尋ねた。

「ブラッククロスの最終目的は、遺伝子操作を利用して人類の進化をコントロールすることです。彼らは、自分たちの理想とする人類を作り出そうとしているのです。」教授は厳しい表情で答えた。

「そんなことが…」私は驚きを隠せなかった。

「そのためには、新薬の完成が不可欠です。そして、その新薬を試験するために、多くの被験者が犠牲になっています。」教授の声は怒りに震えていた。

「私たちはその真実を暴き、彼らの計画を阻止しなければなりません。」慶太が決意を込めて言った。

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私たちは次に、ブラッククロスの現在の活動拠点に向かうことにした。資料には、町外れにある廃工場が拠点の一つとして記されていた。私たちはその工場に潜入し、さらなる手掛かりを探すことにした。

廃工場に到着すると、周囲には不気味な静けさが漂っていた。工場の入口は閉ざされていたが、私たちは隠し通路を見つけて内部に侵入した。

「気をつけて。彼らは警戒心が強いはずだ。」私は夏美に囁いた。

工場の内部は暗く、冷たい空気が漂っていた。私たちは懐中電灯を手に、慎重に進んでいった。廊下を進むと、奥の部屋に明かりが漏れているのが見えた。

「ここに誰かいるかもしれない。」私は夏美に言った。

私たちは息を潜めて部屋に近づいた。中には、数人の男たちが机を囲んで話し合っていた。彼らの会話を盗み聞きすると、重要な情報が聞こえてきた。

「次の実験は成功しなければならない。この新薬が完成すれば、我々の計画は実現する。」一人の男が言った。

「しかし、被験者の安全性が確保できていない。もし失敗すれば、大きな問題になる。」別の男が反論した。

「そんなことはどうでもいい。我々の目的は、理想の人類を作り出すことだ。」最初の男が強く言い放った。

私たちはその会話を聞いて、ブラッククロスの計画がいかに危険であるかを再確認した。私たちはこの情報を持ち帰り、次の手段を考えることにした。

*

工場を出た私たちは、再び白石教授の元に戻り、得た情報を共有した。

「教授、彼らの計画は進行中です。私たちはこの情報を元に、次の一手を考える必要があります。」私は焦りを感じながら言った。

「分かりました。まずは、この情報を元にブラッククロスの幹部たちの動きを追いましょう。彼らの計画を阻止するために、具体的な手段を考えなければなりません。」教授は冷静に答えた。

私たちはさらに詳しい調査を行い、ブラッククロスの活動を監視することにした。彼らの動きを追う中で、次第に真実が明らかになりつつあった。

「父たちが命を賭けて追った真実を、私たちが明らかにするんだ。」私は決意を新たにした。

「そうだ、私たちならできる。」慶太も力強く答えた。

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